「ダンスと映画」監督へのQ&A VOL.1

松山(2/22)と京都(2/24.25)の上映会が間近となりました!
上映作品の3名の監督宛に、メール形式のQ&Aをお願いしました。
鑑賞前にお読みいただくと一段と楽しめるかもしれません。
真っ白の状態で鑑賞したい!と思われる方は、上映後にどうぞ!

VOL.1  飯名尚人監督作品 「熱風」(2014年)について

Q:水野立子 2014年JCDN国際ダンス・イン・レジデンス・エクスチェンジ・プロジェクトvol.4で制作した全4幕パフォーマンス作品「熱風」のプロデューサー

Q:私はこの映画を観ているうちに、現実と虚構が混ざったような、時代がいつかもわからない、不思議な世界に引き込まれる強烈な感覚に陥りました。「熱風」は、長期間構想をあたためた作品だと思いますが、映画版の発想、アイデアの元をお聞かせください。

これが何についての物語かと聞かれれば「運命についての物語」という風に答えています。「100年に1度、熱い風が吹く島」というのは、何らかの比喩です。2008年に沖縄で僕が体験した実話を元に、いろいろな部分をフィクションに置き換えて実話を隠していく作業を繰り返して書きました。目にしているものは現実の世界だけど、語られていることがファンタジー、メルヘンといいますか、世界を寓話的に描こうとしています。物語映画というのは、現実と虚構の境界線をグラデーションにしていく作業かと思います。

運命というのは人の手ではどうにもできないことがあって、それに翻弄されていく人々を描こうとした時、沖縄というのがまさにその渦中にあったわけなんです。もともとはパフォーマンス作品として作って、劇中映画として作ったのがこの「熱風」です。舞台の方は、ある実在の写真家が、ロシア、カンボジア、キューバ、サラエボ、タスマニア島へ旅をする脚本を書きました。でも実はその写真家の物語を書く前に、この沖縄での二人の会話劇という脚本を2011年に書きました。この映画の脚本の土台になっています。

 

Q:主役の二人の男性は、いい味を出していますね。この配役にいきついた経緯は?

「熱風」は2時間半の舞台作品として作ったのですが、舞台版で出演しているのが笛田宇一郎さんでした。舞台ではずっと喋っている役なので、映画版では逆に一切喋らないことにしました。川口隆夫さんには「オカマのガイド」という役で出演してもらった。オカマという言葉は、今は差別用語になってしまうのかもしれませんが。二人の「よそ者」が、ある島で出会う話なんです。日常の話として、笛田さんはいっつもタバコを吸っているし、隆夫さんはいっつも酒を飲んでる。だから映画でもそのまま同じ行為をしてもらっています。脚本の中でダンスシーンは重要で、川口隆夫さんは沖縄で作品発表したりとかもしていて、何か生まれそうだなと思いまして。湿気みたいな存在が必要だったのですが、隆夫さんはお酒飲むと湿ってくる感じがあるんですよね(笑)。この二人の役柄は、お互い別の世界に住んでいる人たちで、つまり出会わなそうな二人が出会うという話である必要があったんです。お二人とも舞台で活躍されている方ですが、もちろん「熱風」をやる前までは、二人とも知り合いではないわけです。

 

運転手役の前田さんは、沖縄県立博物館美術館の副館長で、この撮影で現地コーディネートをしてくれたんです。首里劇場も、前田さんが交渉してくれた。前田さんが高校生の時に、学校さぼって通ってたというポルノ映画館です(笑)。首里劇場は、まだ35mmフィルムでポルノ映画の3本立て上映をやっている実在の映画館。映画祭の主催者役で登場するのが、その首里劇場の本当の館長さんです。撮影当日「出演してくれませんか」とお願いしたら、「じゃあ、着替えてくる」といって、あのシャツに着替えてきてくれた。セリフは長いから、台本をちぎって渡して、そのまま読んでもらったんです。そのあと、映写室に連れて行ってくれて、フィルムを映写機にかけるのを見せてあげる、と言ってくれ、そのまま撮影しました。ですので、ドキュメンタリーとして撮影している部分と、演出的に撮影している部分が入り混じっています。


Q:画面から「熱風」というタイトルのように暑苦しくなまぬるい風を感じました。沖縄をロケ地に選んだ理由や、あなたにとって沖縄はどのような場所なのでしょうか?
また今回の沖縄での撮影の印象をおしえてください。

沖縄での撮影当日は、「過去最大級の台風」が来る日だったんです。3日間の撮影スケジュールで考えて、沖縄に行ったけど、1日で撮影するしかなかったので、行きの飛行機の中で撮影台本を書き換えたり。首里劇場の前で最後に風が吹いてくるんですが、あれは台風の湿った風で、あのあとどんどん空が暗くなっていき、夜にはものすごい暴風雨になりました。撮影がギリギリ終わったという感じでした。

生ぬるい風というのは、沖縄で感じたものです。初めて沖縄に行ったとき、一番初めに感じたのは空気の重さと緑の黒さでした。残念ながら、コマーシャルで見るような海の青さ、空の青さではなかった。そういう個人的な体感も映像で残しておきたいと思って、映像のカラーグレーディング(色彩調整)を行いました。


Q:古い映画館での川口隆夫さんが踊るシーンは、楽しくも、悲しくもあり、人間の深い機微が感じとれ、観ているほうも踊りだしたくなりました。あのシーンはどうやって生まれたのですか?

首里劇場に入って、たいして打ち合わせもしないで、すぐカメラを回しました。隆夫さんには、首里劇場の中をウロウロ歩き回ってもらった。それで、どう撮影しようかな、とか考えながら隆夫さんの歩く後ろを追いかけて、撮影してたんです。カメラが回ると、隆夫さんは「演者」になるんですね。スタートとか、カットとか言わなくても、僕がカメラを回していると、隆夫さんは演じ始めるんです。僕もそのまま撮影を続ける。そういう関係性です。隆夫さんが舞台のあたりに来たから、「なんか踊ってよ」と言うと隆夫さんが踊り始めた。演じることと、演じないことが入り混じっているような感じで、お互いで何かを了承しあっているようなところもあります。


Q:全編を通して物語の進んでいくシーンの展開に、あるテンポの巧みさ、独特な時間の流れを感じます。映像の中の時間を操作するような感覚です。何か意図的に工夫されていることはありますか?

笛田さんにも隆夫さんにも、常に衣装を着ててもらって、笛田さんはタバコ、隆夫さんは缶ビールをいつも手に持ってもらってました。いつでも撮影できるように、二人には常にスイッチがONの状態にして連れ回したんです。なにしろ夜には「史上最大級の台風」が来ちゃう。撮影できる瞬間があれば、すぐ撮影したかった。撮影していると、どんどん温い湿った風が吹いてくるし。

車で移動中に「ちょっとここで、このセリフ言ってみて」とか。そういう撮影方法。二人ともカメラが回ると、僕が何も言わなくても演者になってくれるんで、ドキュメンタリー撮ってるみたいな撮影でした。A&Wのドライブスルーでジュースを買うシーンも、運転してくれてた前田さんが自分の財布からお金出して払ってくれて。「あとで払います」って言ったら、「いいです、いいです」とか言って(笑)。こういう撮影方法だから、現実と虚構が混ざったような感じになってるんでしょうね。

そんなような撮影方法なので、いちいち現場で撮影した素材のプレビューもしない。編集作業で、もう一度、演出し直していく。この作品での編集というのは、脚本通りに映像を繋いでいくわけではなく、撮れちゃった素材を見ながら、編集を考えていく感じです。